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その戦いでエイトたちは窮地に立たされていた。 相手の魔物たちは強敵ではなかったが、休みなく戦い続けた無理が祟って、全員が体力も魔力もほとんど使い果たしていた。 敵の放った毒がククールを襲い、また別の魔物の一閃が、ゼシカを限界まで痛めつける。 ククールは強烈な毒に耐えながら、残された魔力の全てでゼシカを回復した。 エイトたちは残された力を振り絞り、敵への攻撃をする。 エイトが斬り、ヤンガスが打ち、ゼシカがとどめをさす。魔物たちは塵となって消えて行った。 それを見届けると、激しい痛みと嘔吐感を耐えていたククールは前のめりに倒れた。 「ククール!!」 叫びながら、ゼシカは倒れ込むククールに駆け寄った。 毒に冒されたその顔は色を失って、額には汗が滲み出ている。 「エイト!どくけし草を…!」 ゼシカの訴えに、エイトは沈痛な面持ちで首を横に振る。 どくけし草はおろか、薬草も、魔力を回復する道具もない、とその顔は物語っていた。魔力を使い果たしたエイトがルーラを唱える事も出来ない。 状況は絶望的だった。そうしている間にも、毒はククールの身体を蝕んでいく。 ゼシカがククールに取りすがる。 「イヤ!イヤよ…。死なないで!ククールゥ…ッ」 大粒の涙がゼシカの頬を伝った。 「ゼシカ、オレの為に泣いてくれるのか」 ククールは苦痛に歪む顔をゼシカに見せまいと笑ってみせた。 その手がゼシカの頬を優しく包む。ゼシカはその手を握り返した。 「ククールを失いたくないの…。ずっと言えなかったけど…好きなの…。」 「ゼシカ…。オレもだよ。」 ククールは嬉しそうに笑った。不思議と穏やかな気持ちだった。 ヤンガスはどうする事も出来ずにククールとゼシカを見守っていた。自分の腑甲斐なさに歯噛みする。 とても見ていられないと後ろを向くと、エイトが何やらゴソゴソと、ズボンのポケットを探っていた。 「ウウ…、兄貴。こんな時に何をしているんでげすか?」 エイトはズボンのポケットからしなびた草を取り出した。 「あ、どくけし草…。」 エイトとヤンガスは顔を見合わせた。 ゼシカとククールを見ると、二人は今や熱烈に口付けを交わしていた。 「ゼシカの姉ちゃん、怒るでげしょうね…。」 エイトとヤンガスの脳裏にゼシカのスーパーハイテンション双竜打ちが鮮やかに浮かぶ。二人の背筋に冷たい汗が伝った。 そして---ふたりはそっと『どくけし草』を処分した。
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栄えている街とはいえ、大通りを外れた裏路地はやっぱり人通りもないし、いい雰囲気ではない。 でも宿屋までの道はこっちが近道だから、と、ゼシカはその薄暗い路地を足早に歩いていた。 ―――何気なく視線を上げた瞬間、狭い道の先に立ちはだかる人影にギクリとして立ち止まる。 どんな明るい街にだって、悪い連中は必ずいる。陽も落ちて、しかもここは民家とは離れたさびれた路地裏。 声を上げても誰にも聞こえないかもしれない。どうしよう、ゼシカは焦った。どうしてこんな時に限って。 影が、無言でザッと足音を立てて近付き、反射的に身体がビクッと震えた。 さらに一歩。ゼシカの足も、それと同時に後ろにさがる。しかし恐怖が先に立ち、逃げ出すことすらできない。 凍り付いたように動けなくなったゼシカをよそに、影は最後の一歩を大きく踏み出しゼシカの目前に迫った。 「………………ククール?」 呆然とその名を口にする。ろくな明かりのない路地ではその赤い制服が漆黒に見えて逆に恐怖心を煽ったが、 近くで確認すれば見間違えるはずもない、それはククールだった。一応は、ゼシカにとっての騎士である。 ゼシカははーーっと大きな息をはいた。 「驚かさないでよもう…心臓止まるかと思ったじゃない」 怒るより安堵が先にきて、文句を言いながらも胸をなで下ろす。 と、下げた視線の先、ククールの左手に握られたレイピアを見てぎょっとする。 ―――血が。 「なに…どうしたの?モンスターでもいたの?」 怪訝な顔で尋ねるゼシカに、ククールは薄い笑みを浮かべたまま あぁ、と呟いてレイピアをヒュッと空中で切った。 小さく飛散する血痕を気にもせず、それを鞘に戻す。ゼシカは不穏なものを感じて無言で彼を見上げた。 「…別に?」 ククールは笑ったままだ。 なんだろう…何か、変だ。このタイミングでククールが現れてくれて、これ以上の安心はないはずなのに。 未だに不安感が去らないのは。 ゼシカは理由のわからない居心地の悪さに耐えきれなくなり、意を決してククールの脇を通り抜けようとした。 「………何もないなら帰りましょう。いつまでもこんな―――」 しかし言いかけた言葉と同時に、ゼシカの足が突然止まった。 ククールがゼシカの腕を捕らえ、両肩を押さえてあっと言う間に壁際に押しつけたからだ。 余りにもいきなりすぎて声も出ないゼシカ。微笑を崩すことのないククール。 しばらくそのままで、お互い身じろぎひとつしなかった。 見慣れているはずの彼の笑みが、今のゼシカには凄味をたたえた悪魔の笑みに見える。ゼシカの喉がゴクリと鳴った。 「………………ゼシカ」 「………………ゃ、やだ、なにクク―――」 「お前武器は?」 え?と声がもれる。脈絡のない問いに、震えそうな声をなんとか抑えてゼシカは答える。 「武器…は、置いてきた、わ。宿に」 「ふぅん」 自分で聞いておきながらどうでもいいような返事を返したと思ったら、何の前ぶれもなくいきなりククールは ゼシカの口唇を奪った。しかもなんの気遣いも優しさも技巧もない、力任せの強引な。 あまりの衝撃に一瞬頭が真っ白になっていたゼシカは、ハッと我に帰り渾身の力をこめて彼の頬を張った。 「―――なにす………!!!!」 「メラしねぇんだ」 沸騰しそうな怒りをサラリと流して、ククールはからかうようにそう言った。ゼシカが目を見張る。 彼の言いたいことが見え、わなわな、と拳が震えた。バカにされているんだ。 「………おあいにく様。MPなら少しは残ってるわ、―――アンタみたいな男を撃退するためにね!!」 怒りの余り抑えつけられた肩を引きはがして、ゼシカは指に炎を灯した。 一発のメラくらいならまだ撃てる。間近で黒焦げにしてやる。 しかし、その時ククールが素早く唱えた呪文は。 向けられた手の平がかすかな光を放ったと思った瞬間、ゼシカの炎はたちまち消滅した。 そして、なぜか凄まじい脱力感がゼシカを襲う。支えをなくしてフラ、と倒れかけたところを、 再びククールに捕らえられてしまう。今度は両手首を押さえられ、両足の間に下半身を挟まれる形で。 さっきよりももっと身体を密着させられて、ゼシカは怒りと羞恥で顔を赤く染めた。 「…ッ、なんなのよ…ッ、離しなさいよ!!」 なんて力なんだろう。いつものヘラヘラした、そしてフェミニストな彼からは想像もつかないほど、 容赦なくギリギリとこめられる力。まるで憎まれているようだ、とすら思う。 ゼシカが藻掻くのを楽しんでいるかのようなククールの表情に、ゼシカの心にまた不安が蘇ってくる。 ―――やっぱり、いつもとちがう。 「………ゼシカちゃん、思いっきし力こめてさっきのビンタ?」 ククールが耳元でおかしそうに囁く。 「全然痛くねぇよ、ゼシカ」 「………ッククール!!」 ついにゼシカは弱音をもらすように彼の名を叫んだ。どうしちゃったの?しかしククールは薄笑いをやめない。 「武器もなくて、女の細腕で殴ったってあんな程度で、おまけに頼みの綱の魔法も…取られちまったしなぁ?」 ハッと気付く。さっきかけられた魔法は、あれは…マホトラだ。わずかに残しておいたMPを吸い取られたのだ。 ―――どうしてそんなことするの? どうしてそんなことまで。 ゼシカの瞳に今度こそはっきりと恐怖が浮かぶ。そして脅えが。 途端、ククールの手が、折れそうな強さでゼシカの手首を強く握った。 「―――何フラフラしてんだよこんな所で!?武器も持たねぇで何やってんだよお前は!?!?」 まさに堰を切ったように。 ククールの秘められていた怒りが一気にゼシカにぶつけられる。ゼシカは驚きすぎて声も出ない。 「…オレは前から言ってるよな、てめぇの無自覚さ自覚しろってさ。もっと用心して警戒しろって。 世の中には腕の立つ奴も、ある程度魔法が使える奴も、呆れるくらい悪知恵の働く奴もいくらでもいるんだよ」 ますます強められる手の力に、ゼシカは本気で顔を歪める。 「なのにコレかよ。なんでそうなんだよ。馬鹿かお前は。オレがどんだけ」 「…ッ、………クク…」 ククールの本心を知っても、ゼシカの胸から不安はぬぐい去れなかった。 いつもとちがう。その感覚だけは今も感じている。ククールが、追いつめられているみたいに余裕がない。 だって、だって、来てくれたじゃない。そうでしょ?だからもういいじゃない。 なのにどうしてそんなに怒るの? そう、彼はものすごく怒っている。今まで見たことがないレベルで、本気で。 ゼシカの鎖骨あたりに額をつけ、脱力して凭れかかっているのに手首を拘束する力だけは強くなる一方で… とにかく、ごめんなさい、とか細い声を出すことしかできなかった。確かに悪いのは自分だ。 しかし次の瞬間肩に走った痛みに、ゼシカは小さく悲鳴を上げた。そしてそのまま強く吸われる感触。 肩口を噛まれ、そして跡をつけられたのだ。 混乱するばかりのゼシカの耳に直接、ククールの低い低い囁きが注ぎ込まれる。 「―――オレを、知らない男だと思えよ。そうしたらわかるだろ?自分の愚かさが」 それはゾッとするほどに甘い声で。 全身に鳥肌が立った。 獰猛な目をした彼の背後に、突き刺すような光を放つ満月が、異様な大きさで存在している。 もうゼシカには、今自分を蹂躙しようとしている目の前の男が、まさに見知らぬ暴漢にしか見えなかった。
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魔法の鏡に魔力を宿す方法を求めて船で各地を巡り、一行が偶然足を踏み入れた洞窟。 そこで何気なく探索を始めたのが間違いだった。 いや、何気なくではない。確固たる理由があった。 船から降り立った時、目の届く範囲に樽があったからだ。 冒険者の性癖というやつで、未知の場所で樽や壷を見ると投げ割りたくなる衝動はどうにも抑え難い。 好奇心が身を滅ぼすとは、よく言ったものだ。 そこに出現した魔物は、圧倒的な強さで仲間たちを蹂躙した。 先手を取られ、繰り出された連続攻撃は何度撃ち込まれたかも今となっては定かではない。 懸命の回復もまるで追い付かず、一人、また一人と斃され、あっという間にククール唯一人となってしまった。 もう一度撃ち込まれたら確実に自分も後を追うことになるだろう。 口惜しいが、自分の技量では目の前の脅威を退けることなど到底不可能だ。 ならば、取るべき手段はひとつ……。 万にひとつの望みを賭けた、格上の敵からの逃走が成功した。 辺りを見回し魔物を振り切ったことを確認すると、ククールは乱れた息を整え呟いた。 「ふう。ククール様一世一代の大博打、成功…っと」 いつもの癖でこんな時でも軽口めいた言い回しだったが、それに応える声は今は無い。 ククールは斃れた仲間たちの元で簡易結界を張った。とりあえずこれで魔物の襲撃は回避することができる。 しかし、少しでも移動すればこの結界は解けてしまう。 折角逃げおおせたのだ。ここは歩く以外の方法での脱出を模索するのが賢明というものだろう。 ルーラには同等の効果があるキメラの翼というアイテムがある一方で、リレミトにはそれが無い。 ククールはその理不尽さに不満を抱きつつ、自らの負った傷はそのままの状態で横たわるゼシカに対してザオラルを唱えた。 「……しくじったか」 ゼシカは微動だにしなかった。 もう一度。 しかし、またしても望む効果は得られなかった。 ザオラルは被術者との相性も成功率に関係するのだろうか? ならば……、と、リレミトを習得しているもう一人であるエイトに対して唱えてみたが、こちらも失敗する。 その後もククールはゼシカとエイトに対して交互にザオラルを唱え続けたが、遂に一度も成功することなく魔力が尽きてしまった。 「逃げた時に運を使い果たしたってか?ったく、冗談じゃねえぜ」 ククールは舌打ちをしてその場に腰を下ろした。 魔法の聖水はあっただろうか?と、道具袋を確認してみたが、雑多なものが多すぎてなかなかそれらしいものは見当たらない。 そんな状態で道具袋と格闘しているうちに、ククールはサザンビークでエイトが買っていた珍しいアイテムのことをふと思い出した。 それは、世界樹の葉。 とても貴重な物で、使うとザオリクの効果があるという。 「前衛が持ってても倒れちゃったら意味が無いから、ゼシカかククールが持っててくれるかな?」 「ああ、オレはザオラルがあるから、ゼシカ頼むわ」 そんなやり取りをしてゼシカに預けられたはずだった。 「悪いなゼシカ、ちょっと荷物を見させて貰うぜ」 もの言わぬゼシカに向かって律義に断りを入れてから、ククールはゼシカの荷物を調べ始めた。 ほどなくして世界樹の葉は見つかったが、それを手にしたククールは新たな問題に直面する。 サザンビークでゼシカに世界樹の葉を預けることにした後、売り子から説明を受けているゼシカたちから少し離れて、ククールは売店の近くを通りかかった踊り子に視線を投げ掛けたりしていたのだ。 つまりはこういう事である。 「……使い方分からねぇ」 しかし、いくら考えても分からないものは分からない。 正しい使い方が煎じるにしろ練るにしろ、葉そのものを余すところ無く服用すれば恐らくは効果が得られるだろう。 「ま、サラダの野菜だと思えばいいだろ」 そんな訳の分からない理論を振りかざし、ククールは今一度世界樹の葉を見た。 さて。どうやって口にさせる? 「手っ取り早い方法はこれだよな」 ククールは手袋を外し、膝の上にハンカチを広げると世界樹の葉を可能な限り細かく千切り始める。 やがてこんもりとした薬味の山が出来た。しばらくそれを眺めたククールは、ハンカチを地面に置き直すと山を三等分にした。 ククールはその山の三分の一をこぼさないように注意しながら口に含み、小脇から水筒を取り出し、栓を外して水を口に含んだ。 そしてエイトには目もくれずにゼシカを抱き起こし、首の後ろに手をあてがって頭を仰け反らせる。 しかし思ったほど口が開かなかったので、空いているもう片方の手をゼシカの唇にあてがい、ちょうど良い加減に口を開かせてからゆっくりと慎重に唇を重ねた。 残りの二山も同様にしてゼシカに飲み込ませ、失敗なく作業を終えられたことにククールは安堵した。 あとは効果が現れるのを待つだけだ。 ククールは未だ昏睡状態のゼシカを抱き直して仰け反らせていた頭を立て直し、口角に残っていた水滴を指で拭おうとした。 が、頬のところでその手は止まり、頬から耳にかけてを愛おしむように包み込む形に変わる。 (……このくらいは、いいだろう?) ククールは唇を寄せてその水滴を吸い取ると、続けてほんの少しの間だけ再び唇を重ねた。 世界樹の葉の効果はその後すぐに現れ、ゼシカは意識を取り戻した。 「私、やられちゃってたのね……」 ゼシカは起き上がって辺りを見回し、傍らに斃れたままのエイトとヤンガスの姿を認め眉をひそめる。 「でもあの魔物の群れからは逃げられたのね。凄いわ」 「ああ。なんたってオレには幸運の女神がついてるからな」 ククールはそう言ってにやりと笑った。 「でもMPが尽きちまってたもんで、悪いとは思ったがゼシカの荷物から世界樹の葉を出させてもらって使ったぜ」 「悪いだなんて…。いいわよ緊急事態だったんだから」 ゼシカは傷だらけのククールを見て、改めてよく助かったものだと感心していた。 「で、話は後だ。とりあえずリレミト頼む。ここはヤバすぎるし、こいつらも早く蘇生しないと」 「分かったわ。ククールの怪我も治さない……と…!?」 ゼシカはククールの顔を見た途端に目を見開いて絶句し、真っ赤になるとくるりと背を向けてしまった。 「ん?オレの顔に何か付いてたか?」 (つ…付いてるも何も………口許に……緑……葉っぱのかけら……!!) 背を向けて小刻みに震えるゼシカの様子を案じてククールは呼び掛けた。 「どうしたゼシカ?大丈夫か?」 その震える肩に手をかけると、ゼシカは雷に打たれたように跳ね上がった。 「なっ、何でもないわ!何でもないの!!リレミト!!!」 ~ 終 ~
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真昼の空が真紅に染まったあの日の後も、ベルガラックの歓楽街は変わらずの賑わいを見せていた。 聖地ゴルドに降り掛かった災厄のことは風の便りにこの街へも伝わってきていたが、それが遠く離れた土地での出来事のせいか、あるいはこの街独特の雰囲気なのか、行き交う人々の表情は、他所で見られるそれとはどことなく違っていた。 そんなベルガラックを、一行は骨休めの地に選んだ。 煉獄島での過酷な日々の直後に繰り広げられたゴルドの激戦で、今までになく消耗してしまっていたからだ。 「腹が減っては戦はできぬ、と、昔から言われてるでげすからなぁ」 そう言いながら天井を仰ぎ、満足げに自らの腹を叩くヤンガスを見て、エイトとゼシカは噴き出した。 ひとしきり笑った後、ふとゼシカの表情が曇る。 「……ククール、やっぱりまだ辛そうだったわね」 ぽつりと呟いてゼシカは窓の外を見る。 その視線は、ククールが戻ったであろう宿の方角に向けられていた。 「仕方ないよ。色々あった後だからね。色々」 「少しでもメシは食ったんでげすから、今はそれで良しとしやしょう」 「無理矢理って感じもしたわよ?」 プッ、と、ゼシカは再び噴き出した。 食べる気分じゃないと言い張るククールにヤンガスが脚払いを仕掛けた後、樽を扱うが如くに担ぎ上げてレストランへと連れ込み、席に着かせた後もその眼光で無言の圧力をかけていたことを思い出したからだ。 一見して乱暴に映るが、それがヤンガス流の気遣いというやつだった。 「ヤンガスが飲みたいそうだから僕たちは酒場に行くけど、ゼシカはどうする?」 店主に勘定を頼みながらエイトが言った。 「どうするって?」 問い返してはみたものの、ゼシカにはエイトの言わんとしていることは分かっていた。 ククールの様子を伺いに行くか否か、ということだ。 気にはなっていたが、一人でククールの部屋を訪ねることに関しては、ゼシカには正直なところ未だ若干の躊躇があった。 そんなゼシカの心境を見て取ったエイトは後押しをする。 「気になるなら行ってみるといいよ。でないとゼシカが落ち着かないんじゃない?」 「うん……。でも一人で行くのって変じゃない?」 「別に変じゃないと思うけど?……あっ!でも何かあっても室内でメラはだめだよ。ラリホーあたりにしといて」 「それじゃククールを信用してるんだかしてないんだか分からんでげすよ、兄貴」 笑いながらそう言うヤンガスの隣でエイトはしゃがみ込み、小脇に置いてあった道具袋を漁り始める。 「ゼシカが反撃するような展開になるのは、僕たちにとってはむしろ歓迎すべきだと思うけど?」 探し物をしながら話すエイトはどうやら笑いを堪えきれないようで、小刻みにその肩を震わせていた。 そんなエイトを見下ろしながら、ゼシカは少々呆れた口調で返す。 「……荒療治ってわけ?」 「そうなるかどうかはゼシカの加減次第だけどね。はい、これ」 笑顔で返事をしながらエイトはゼシカに、道具袋から探し出した物を差し出した。 「念のため」 「やっぱり信用してないんじゃない」 ゼシカは苦笑すると、エイトからキメラの翼を受け取り腰のポーチにしまい込んだ。 (行くとは言ったものの、どうしよう……) 宿屋の自分の部屋に戻ったゼシカはベッドに腰掛けて悩んでいた。 ただ部屋を訪ねるだけでは、露骨に心配していると言っているようなものだ。 心配しているのはもちろん事実だが、ククールに対してそれを表面に出してはおそらく上手く事は運ばないだろう。 考えがまとまらないままにゼシカはベッドからドレッサーへと移動し、手持ち無沙汰に髪を結び直し始める。 しかしそれもすぐに終わり、鏡を見つめるだけになってしまった。 その後様々な角度に首を傾げながら百面相を始めたゼシカは、先程の食事で紅が薄くなっていたことに気付き、ドレッサーの上のコスメボックスを開ける。 「あ……!」 思わずゼシカは小さな声を漏らし、にんまりと鏡の中の自分に笑いかけた。 手早く紅をひき直すと、足早にククールの部屋へと向かう。 「お願いしたいことがあるんだけど、よかったら屋上に来てくれる?」 ゼシカは部屋の入り口から様子を伺い、ベッドに腰掛けていたククールにそう伝えると屋上へと向かった。 風に揺れる街路樹から漂う緑の香りが、屋上に出たゼシカを包み込む。 その香りに触発されて思わず深呼吸をした後、ゼシカは街の入り口と外の風景を望める側へと移動して満天の星空を眺める。 彼方から瞳に飛び込んでくる不規則に瞬く星の光と、視界の端で規則的に瞬く歓楽街の人工的な光。 それらは昔も今も変わらないのに、明日はあるいは……と考えると、嫌でも感傷的になってしまう。 時間は、あるようで無いのだ。 なのでククールには一刻も早く、いつもの調子に戻ってもらわなくてはならない。 仲間のために。旅の目的達成のために。ひいては、この世界のために。 (……おためごかしなのかな?これって) ふと脳裏にそんな言葉がよぎって、ゼシカは素直になれない自分に苦笑した。 「星に願いでも?」 乾いた靴音と共に、背後から待っていた声がした。 「ま、女神像も無くなっちまったし、教会もあのザマだし、それが一番いいのかもな」 「そうかもね。お金かからないし、願いも叶ったし」 ゼシカは振り返らずに相槌を打ちながら、歩み寄ってくるククールの気配を耳で追う。 「ふーん、叶ったのか。そいつは良かった」 頃合いを見計らってゼシカはククールの側に向き直ると、上目遣いでやや悪戯っぽい笑みを作りながら言った。 「ククールが来てくれますように、ってお願いしてたから」 「なんだ。そんなことか」 ククールは一瞬呆気に取られ、直後に軽く噴き出した。 その様子を見て、ゼシカは安堵の表情を浮かべる。 「良かった。思ったより元気そうね」 「さっきよりはマシになったかもな。……で?オレに頼みって何?」 単刀直入な物言いをするククールを見て、ゼシカは未だククールの気持ちに余裕がないことを感じ取っていた。 いつものククールならば、ここで茶々のひとつでも入れてくるだろうに……。 ゼシカは意を決して、先程思いついたプランを実行に移すことにした。 「えっとね。頼む人を教えて欲しいの。ククールしか知らない人だから」 「なんだそりゃ?」 首を傾げるククールの前でゼシカはスカートのポケットを探り始める。 「これ、無くなっちゃったから。決戦前に元気のもとが欲しくて」 そう言いながらゼシカがククールに見せたものは、空になった小さな瓶だった。 「まさかゼシカとここに来ることになるとは、思いもしなかったぜ」 ククールは苦笑しながらドニの酒場の扉を開き、手馴れた振る舞いでゼシカを店内へと導く。 「いらっしゃい!久し振りね、ククール。今日はそちらの彼女とデート?」 バニーが口にしたデートという言葉を耳にしたゼシカは、胸の鼓動が心なしか早くなり頬に熱を帯びてしまったことに焦っていた。 そう思っていない……いや、認めようとしないのはゼシカだけで、二人の有り様はどこから見ても立派なデートの光景である。 「まぁ、そんなようなもんなのかな?」 「なっ……!!」 条件反射でククールの言葉を否定しかかったゼシカは慌てて言葉を飲み込んだ。 ここで喧嘩を始めてしまっては、思い描いたプランが台無しになる。 「あら、恥ずかしがらせちゃった?ごめんなさいね、うふふ」 日々あらゆるタイプの客を捌く百戦錬磨のバニーは、すかさず妖艶な微笑みを見せながらゼシカの動揺を鎮めにかかってきた。 もっとも、ゼシカは客のタイプとしてはかなり特異なので、その効果の程は未知数ではあったのだが。 「ゼシカ、頼む相手は彼女だぜ。じゃ、オレは向うで待ってるから」 ポン、とククールはゼシカの肩を軽く叩き、その手をひらひらと振りながらカウンターへと向かう。 カウンター席に腰掛けマスターと言葉を交わし始めたククールの背を見ながら、ゼシカは胸を撫で下ろした。 ゼシカの真の目的……ここでククールにひと時を過ごしてもらおうというプランは、どうやら軌道に乗りそうだ。 「聡明そうな感じのお嬢さんだね」 カウンター席に斜めに腰掛けゼシカとバニーの様子を見守るククールに、マスターは水を差し出しながら話しかけた。 「そりゃ、ああ見えて実は稀代の大魔法使いだからな。賢者の末裔だし」 二人の視線の先のゼシカは、バニーに頬を触られたり、バニーの動作の真似をして指先をいじったりしていた。 話の内容は酒場の喧噪にかき消されて聞くことはできないが、おそらくは肌の手入れなどの手ほどきを受けているのだろう。 男所帯で過ごしている中ではまず見ることのできない、ゼシカの楽しげな姿を目の当たりにしたククールの目尻が思わず緩む。 「へえぇ、そりゃ凄いや。どうりで、今までぼっちゃんが連れてきた女の子とはどこか違う感じがしたわけだ」 「いい加減、ぼっちゃんは勘弁してくれよマスター」 ククールは苦笑しながらマスターの側に向き直った。 「あと、連れてきたんじゃなくて、オレが連れてこられたんだよ、今日は」 「こりゃまた珍しいこともあったもんだね。それも空が赤くなったせいかな?」 「それは関係ないような……。いや、違うとも言い切れないか」 そんなやりとりをしているうちに、ゼシカがカウンター席にやってきた。 「お待たせ。でももう少し時間がかかっちゃうんだって」 裏口方面の衝立の脇から手を振ってきたバニーにゼシカは軽く会釈をすると、ククールの隣の席に収まる。 「ああ、瓶の消毒とかがあるもんな。どうする?待ってる間、少し飲んでみるかい?」 「うん。何かお奨めってある?」 「あるぜ。マスター、いつものやつを」 ククールはにやりと笑い、呆れるほど気障な素振りで注文を出す。 その様子を見ながら、ゼシカは内心よしよし、と思うのだった。 「これ、ワイングラス?このマーク……?」 ゼシカはマスターがカウンターに置いたグラスを見て呟いた。 それはワイングラスとは似て非なるもので、脚の部分が太く短かい。 グラスの最上部には金色の縁取りがあり、側面には騎馬衛兵を象ったエンブレムが描かれていた。 しげしげとグラスを眺めながら首を傾げるゼシカの様子を見て、ククールは待ってましたとばかりに話し始める。 「これから出してくれるビール専用のグラスで、聖杯型ゴブレットっていうんだ」 「ビール?いつものやつって言うから、ワインだとばっかり思ってたわ」 ビールはジョッキで飲むもの、という固定観念を持っていたゼシカは目を丸くした。 そして、いつもワインを口にしているククールがビールを注文したということにも驚いていた。 「ここのビールは特別でね」 そのククールの言葉を待っていたかのようにマスターがグラスにビールを注ぐと、ゼシカの目が更に丸くなった。 「こんな色のビール、初めて見たわ」 ゼシカが驚くのも無理はない。 マスターが鮮やかな手つきで注いだそのビールは、チョコレートのような色をしていたからだ。 注ぎ終わったビールの上に乗っている泡はミルクティーのような色でまるでメレンゲのようにきめ細かく、緩やかな山を築いていたが不思議と崩れない。 「これは修道院で作られたビールなんですよ」 続いてククールの側に置かれたグラスにビールを注ぎながら、マスターが言った。 「えっ?修道院って、マイエラ?」 「そ。グラスのマークは、ほら、修道院の入り口にあるだろ?」 マスターの言葉を継いでククールが説明を続ける。 「どこかで見たことがあると思ったら、あのマークだったのね」 疑問の一つが氷解したゼシカの表情がパッと明るくなった。 喜怒哀楽いずれの感情にしても、ゼシカの表情はいつもそれを余すところなく表現する。 その清々しいまでの分かりやすさを、ククールは気に入っていた。 「さてと。何に乾杯しようか?」 ククールがグラスを持ちゼシカの側に差し出すと、ゼシカも真似をしてグラスを寄せる。 その動作はアルバート家で身に付けたテーブルマナーとは少々勝手が違うようで、どことなくぎこちがなかったが、それはそれでいいもんだな、と、ククールは考えていた。 「こういうのって初めてだから、よく分からないわ。うーん……」 グラスを掲げたままゼシカはしばらく考え込み、やがてこう言った。 「明日のために、っていうのは?」 「よし。それじゃ、明日のために、乾杯」 「乾杯」 カチンと二人は杯を合わせると、それぞれの口に運んだ。 ~ 続く ~ so sweet…後編
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住人の萌え語りの流れから 見られている。ひたすら見られている。ゼシカはとうとう隣に座るククールを振り向く。「~~~いい加減にしなさいよッ!!」「だってゼシカが本当に可愛いから」「それはもういいわよッ早く朝ごはん食べなさいってばッ!!」「可愛すぎて目が逸らせない」「逸らせて」「嫌だね」呆れと、羞恥で、ゼシカは目をつぶり押し黙る。頭痛がしそうだわ、と呟く。それでも頬は赤い。このバカはテーブルについてから、朝食にまったく手を付けていないのだ。向かいにはとっくに朝食を終えて、音を立ててコーヒーを啜るエイトとヤンガスが。2人とも何も言わないのが余計に嫌だ。死んだ魚のような目で遠くを見ないでほしい。「……ククール。時間がないの。さっさとご飯食べて」「いらねぇよ。お前見てると胸いっぱいで苦しいんだ」「苦しいなら見なけりゃいいでしょうがっ」「恋は苦しいものさ」ついにゼシカはおでこに手を当ててうつむいてしまう。どうしたらいいのだろう、この浮かれポンチを。「……」ゼシカは考え、決心する。ふいに顔をあげてククールの目線と真っ向から向かい合うと、「わかったわ、好きにしなさい。私も好きにするから」そう言って、ククールの前に用意された朝食に、フォークを豪快に突き刺した。ずいっと突き出されるそれに、ククールが軽く身を引く。ゼシカの気の強い瞳。断固として曲げない時の少しわがままな表情。言われたとおりにそれを間近にじっと見つめて、ククールはますます相好を崩して呟く。「…かーわいい」その途端開いた口の中に押し込まれるフォーク。ククールはごく自然にそれを咀嚼しながら、さらにニヤけた顔でゼシカを見つめ続ける。ゼシカは次から次へと彼の口に朝食を詰め込むことに専念した。だって目が合えば、こちらが負けることはわかっていたから。ゼシカの差し出す山盛りのフォークを躊躇なくパクリとくわえるククールは、必死で目を逸らし続けるカワイイ恋人の赤い頬が愛しくて仕方なかった。なんとか全てを食べさせたゼシカは、はあっと疲労に近いため息をつく。「やっと食べたわね…まったく、子供じゃないんだから…」そう言いかけたゼシカの腕を、ククールが強引に引っ張り思い切り顔を近づけた。「まだ食べ終わってないぜ」「な、なんでよ…ちゃんと全部…」「見てるだけじゃ、我慢できない」一気に顔を真っ赤にさせたゼシカの頬に口付けながら、「ちゃんと残さず食べなきゃ…」ククールの口唇が、ゼシカの口唇を丸ごと食べた。仲間の鉄拳制裁がくだるまでの間、2人はおいしい朝食をむさぼったのだった。
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【サザンビーク・宿屋内部】ゼシカ離脱直後 ククール「案外 ひとりで リーザス村に 帰っちまったのかもな。 なにも言わずに 出てったのは 別れが つらいからとかさ……。 うーん ゼシカにかぎって そんなの あるわけないか。」 【サザンビーク・城下町&城内部】リブルアーチに行く前 ククール「やっぱゼシカが オレらになにも言わずに 出てくわけねーよな。 ったく 世話かけやがって。 カタキ討ちがすめば オレは ひとりで 旅に出る予定だったんだが……。 ゼシカを 探し出すまで 一緒にいてやるとすっかな。」 ヤンガス「宿屋で待ってれば ひょっこり 帰ってくるんじゃねえでげすか? ククール「いや それはないだろ。 いくら なんでも 不可解すぎる。」 ヤンガス「やっぱ むさい男ばっかの パーティーが イヤになったとか……。」 ククール「安心しろ。このオレがいるかぎり 断じて それはない!」 【フィールド】ブルアーチに行く前 ククール「喜びも つかのまか……。 もう ちぃとばかし 勝利の美酒に 酔いしれていたかったんだがな。 ゼシカのせいで せっかくの 酔いも きれいさっぱり さめちまったぜ。」 【トラペッタ&リーザス村&ポルトリンク&ドニの町&マイエラ修道院&アスカンタ城】リブルアーチに行く前 ククール「あちこち 考えなしに探すより ゼシカのいなくなった サザンビークで 聞き込みをすべきだと思うぜ。 探し回るのは 聞き込みのあとでも おそくはないだろうよ。」 ククール「いなくなって初めて ゼシカの ありがたみってもんが じわじわと 身にしみてくるぜ。」 ヤンガス「まったくでがすなぁ。 あの胸は反則でがすよ。」 ククール「オレも初めて見たときは 胸に水風船でも 入れてんのかと 見まちがったくらいだからな。」 【隠者の家・内部】ドルマゲスを倒した後 ククール「ドルマゲスを倒せたのも ここの じいさんのおかげだから ひと言 礼を言いたい気持ちも 分かるぜ。 だけど 今はゼシカの足取りを 追うことに 全力をつくそうぜ。」 【フィールド・リブルアーチ周辺】リブルアーチに行く前 ククール「もともと この旅に さほど やる気があったってわけでも ないんだが…… ゼシカが いなくなったんじゃ テンションが 下がりっぱなしだ。 はっきり言って もうマイナスだな。」 【リブルアーチ】ハワードに宝石を取ってくるよう依頼された後 ククール「クラン・スピネルなあ? とにかく そいつを手に入れるまで がんばってみるとするか? 今じゃ オレたちとゼシカとの 接点は あのハワードって おっさんしか なくなっちまったわけだしな。」 【オークニスへのトンネル】呪われしゼシカと闘う前 ククール「オレとしては これ以上 むさい男どもだけで 行動するのは 遠慮したいんだがな……。 このまま 新しい土地に行くなんて それこそ ゴメンだ。 早く ゼシカを 助けに戻ろうぜ!」 ククール「今 この先に 用はないだろ? ゼシカのことも 気になるし 寄り道は 後にしてくれよ。」 【リーザス村】ハワードに宝石を取ってくるよう依頼された後 ククール「ここが ゼシカの出身地? でも 残念ながら ここには ゼシカは いなさそうだぜ。 ……なんで そんなことが わかるかって? う~~~~~ん………………。 ……勘かな。」 【ベルガラック】 ククール「これは カンなんだが ゼシカは これまで訪れた町には いないような気がするんだ。 どうしてだって 聞かれても カンとしか 言いようがねえんだけどよ。」 ククール「なんだなんだ ゼシカよりも カジノが気になるだなんて 主人公って 案外 冷たいヤツだったんだな。」 【フィールド・リーザス村周辺&ポルトリンク周辺】ライドンに会った後 ククール「オレたちが 次に何を するべきか 主人公には ばっちり わかってるみたいだな。 さあ 行こうぜ。1秒でも早く ゼシカを 魔の手から救ってやらなきゃな。」 【リーザス像の塔】宝石入手後 ククール「さあ 次を急がないと 怖い怖いゼシカちゃんが あのデブを 殺っちまうかもしれないぜ?」 【フィールド・リブルアーチ周辺&リーザス村周辺&ポルトリンク周辺】チェルスいじめイベント後 ククール「正直な話 オレだって ゼシカが からんでなきゃ あんな デブと関わるのは ごめんなんだがな。」 【リブルアーチ】呪われしゼシカと戦う前 ククール「……今度ばかりは ヘタしたら 戦ってでも ゼシカを 止めなきゃならないのかもな。 ……よしっ! 覚悟を決めたぜ!」 【リブルアーチ】呪われしゼシカに負けたことがある状態 ククール「……油断したわけじゃねえが あのゼシカは 外見だけじゃなくて 中身も ずいぶん ちがうみたいだな。 ちっ! レディと戦うのに 本気 出さなきゃならないとは まったく 情けないこったぜっ!」 【フィールド・リブルアーチ周辺&リーザス村周辺&ポルトリンク周辺】ハワードが結界を作り始めた後 ククール「このまま ゼシカを 暴走させたまま 放置すれば きっと ゼシカは いずれ滅びる。 止めるなら 今しかない! 主人公 抜かるなよ!」
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「ゼシカ…ゼシカ…ッ、ごめん、ごめんな…!」「く、く…? ……――――ッッ!!!!」痛みと熱にに浮かされたゼシカの意識は、突然スカートの中に忍んできた手の感触に急激に我に返った。「い、やよ…っ!!なにしてんのよ、バ、カ…ッッ」押しとどめようにもケガのせいで腕に力が入らない。無理やり動かした傷から血が吹き出す。「動くな!頼む、これ以上出血するとまずい…」「だ…っ!じゃあ、やめてよ…っ!アンタってこんな時に、最低…っ!!」「頼むから、よけいな抵抗しないでくれ…頼むから…」苦しげな顔で懇願するククールに戸惑い、わけがわからないまま強引に押し付けられる口唇に目を見開くものの、ゼシカはろくな反撃もできない。「…っん、は…っ、……やだ、やめて…」かろうじて絞り出された声はすでに震えていた。今やいつものように燃やすことも殴ることもできない状況で、いつもの軽薄な様子とはまるで違う表情で組み敷いた自分を見下ろすククールに、ゼシカは本能的に恐怖を覚えた。ククールが何かを決意している。動けない私の意思を無視して、何かをしようとしている。考えたくなかったが、それが何かわからないほどゼシカは幼くなかった。太ももを上へ上へと這い上がってくる手の平は、その残酷な答えを如実にゼシカに突きつける。ククールの舌が耳の裏を舐め、そこからぬるぬると蛇線を描いて首筋をたどり、鎖骨や肩を甘噛みした。くすぐったさで、ゼシカの身体が無意識にピクリと反応する。ゼシカがいちばん反応を示した首筋の縦のラインを、再びククールの舌が上下に這い時折強く吸うと、彼女のキツく噛みしめられた口唇から呻くような声が漏れた。そこに意識を取られている間に、ククールの片手が上着をずり下げてゼシカの胸を揉み始める。先端ばかりを色んな角度で優しく抓り、彼の大きな手の平にさえ余るほどの大きさの乳房を波立たせるように揉み、絞り上げる。ゼシカの身体が何かをこらえるように何度も跳ねた。「…っ、く、ぅ…っ」「ゼシカ、今はなんにも考えないで素直に感じて。頼む」「…はぁ、っ、いや、よ、バカ…やめて、クク…ッ」ククールは焼き尽くさんばかりの非難の視線を無視した。スカートの中、足の付け根で留まっていた手の平を動かし、指先を下着の中に滑り込ませる。驚いたゼシカの腕が咄嗟にそれを押しのけようとしたが、ククールの方が早い。ゼシカが言葉もなく暴れた。しかし傷つき力のない抵抗などないも同然だ。片腕で彼女の肩を押さえつけ、口唇と舌で緊張に硬くなっている胸の先を弄り、残った片手は完全なる未開拓地である処女の秘部を犯そうとしている。――――これは強姦以外のなにものでもない。犯す者も犯される者も、この瞬間、同時にそう考えていた。 経験のないゼシカにはククールのしている行為の意味などわかるわけもなかったが、ただ闇雲にゼシカの身体を弄ぼうとしているわけではないと、処女でなければ気づいたかもしれない。ククールはゼシカの性感帯を探り、少しでも彼女を感じさせようと必死になっていた。ただ感じさせるだけならば、例え処女であろうがククールにとってそれはたいした苦ではなかっただろう。しかし今は、優しく卑猥な愛撫でゆっくりと楽しみながら前戯をする、そんな余裕も時間も皆無だった。限られた時間の中でできうる限りゼシカを気持ちよくさせ、濡らしておいてやりたい。「大切に抱く」行為とは程遠い、性急になるばかり。それでもククールはそれを実行するしかなかった。あとで心の底から憎まれてもかまわない。二度とあの笑顔を見られなくなったとしても。ゼシカを絶対に死なせない。騎士でも、僧侶としてでもなく、彼女に惚れた男として、誓った。下半身の最も敏感な突起をとにかくなぶり、はじめての衝撃に彼女が支配されている間に指を侵入させた。わずかに委縮する内部を、強引に広げる。ここだろうと思う場所を強く擦ると、ビクンと腰が浮く。あとは、ゼシカの体中に見つけ出した性感帯を刺激し続け、溢れ出した蜜を使って指の数を増やし限界まで奥を探り、狭いそこを少しでもこじ開けることに専念した。ゼシカの噛みしめられた口唇に指を差し入れると、熱い吐息と煮つまった喘ぎがこぼれ出た。可愛い、甲高い、甘ったるい声に、ククールは陶酔したようにゼシカに口づける。もう、抵抗される気配もない。傷と痛みに侵された精神は、さらに強引に目覚めさせられた性的な快感に堕ちかけ、ゼシカの思考回路をほとんど麻痺させていた。「あっ、あっ、ん…っ、あぁ……っ」「ゼシカ…そのまま…オレのことだけ考えて…頭真っ白にして…」「…ヤ、……あっ、…く、ククー…ル、あっ…」―――しかしゼシカの強い意志の力は、背徳に溺れかけている自分自身と目の前の男をどうしても許せなかった。ふいに、逃れるように身体をねじらせ、精一杯ククールから顔を背ける。「……ッ!ダメ、いや、だめ…っ」「…ゼシカ」「だめ…クク…おねが…」ククールはゼシカの瞳から唐突に溢れ出した涙を、呆然と見下ろした。自由に動かない身体を震わせ快感に喘ぎながらも、なお正しさと過ちを捨てない、その強さ。その瞳の光に、一瞬で魅せられたククールの腕が、無意識にゼシカの足を持ち上げる。「―――-ッ!!イ、イヤッ!!おねがい!!ククール!!」「…ゼシカ、ごめん。………これしか方法がないんだ」たいして準備が整ったとは言えないまだまだ固く未熟なそこに、躊躇なくあてがわれる灼熱の塊。ゼシカの蒼白な顔を間近に見ながら、それでもククールは先端を押し入れるのを止められなかった。「く、アアッ…!ダメよ…っ、わたし、たち、…っ、…こんな…こんな」「ごめん、…我慢して…頼む…!」「待って!!!おねがい!!!ダメこんな…ッッ……――――!!!!」声にならない悲痛な叫びが響き、ククールは自分がゼシカの処女を奪ったことをはっきりと感じた。そしてお互いの身体の内側から回復呪文が広がっていく。見る間にゼシカの傷が癒えていく。 「ヤダ、痛…っ痛い、やだ…!おねがい…やめて…っ!!」「…ッ、ゼシカ…あとでオレを殺して…」本気でそう言った。それと引き換えにできるくらいに、甘美な瞬間だった。ククールの中のもう一人の自分が嘲笑った―――“回復なんてタテマエのくせに”「これしか方法がないんだ」…?なんて都合のいい免罪符があったものだろう。所詮そういうことだ。同情や悔恨の念があるなら、例え義務だってこんなに勃たない。本当にゼシカの身を案じるなら、すでに命に別状はなくなったこの瞬間にも、彼女の最奥に無理やり捩じ込んでいるこの欲望の楔を抜けばいいのだ。それができないのは。―――――オレは自分がゼシカの最初の男になれたことに、心の底から歓喜している――――身体を起こし、ゼシカを膝に乗せて正面から力の限りに抱きしめた。浅く苦しそうな息が耳元に聞こえ、ククールはしばらくそのままで一ミリも動かないでいた。お互い中途半端に身につけたままの衣服が、性急な行為を物語っている。ククールは自身も次第に早くなる呼吸を抑え、ゼシカの汗ばんだ肩に噛みつきながら、囁く。「―――……好きだゼシカ………」ゼシカは朦朧とする意識の中で、それを聞いた。遠ざかる思考の片隅で、こんな悪い夢は、もうすぐ終わると思った。 **
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「ゼシカぁ」 草原の中の、大きな大木に背中をあずけて座っていたゼシカは、耳慣れた声に顔を上げた。 少し離れたところからサクサクと草を踏み分けて歩いてくるのは、確かめるまでもなく赤い不良僧侶。 やがて彼はゼシカの傍までやってくると、隣にドサリと音を立てて腰をおろした。 「なぁ、ひざ貸して」 「はぁ?」 思いっ切り怪訝な顔。ククールは眠いのか目をしばたかせながら、ひざ、と顎で示してみせる。 「…あのねぇ、今私が何してるのかわかってる?」 ゼシカのひざには、スカートとは異なる赤い布が広げられていた。そしてその手には針と糸。 「…オレのマント」 「そうよ。いいかげんほつれがひどいから直してるんじゃないの」 言いながらかがり縫いをしていくゼシカの指をしばらくぼーっと見ていたククールだが、 ふいに目が覚めたのかニンマリと笑った。 「ゼシカも縫い物とかできるんだな」 「そりゃあ一応、一通りはね」 「料理はアレなのになぁ」 「うるさいわねッ!誰にでも不得意なものくらいあるでしょ!!」 そりゃそうだけど、アレを不得意の一言で片づけてしまっていいものなのか。 ククールは楽しそうにクックッと笑っている。 「なによッ もう直してあげないわよ!?」 「それだってなぁ、誰かさんのメラだのメラミだのにやられた分がけっこあると思うんだけどなぁ」 「自 業 自 得 よ!バカ」 ほのかに頬を染めてそっぽを向くゼシカに、ククールは笑いを抑えきれない。 ククールは、ゼシカがもたれている木の幹に、彼女に寄り添うようにして自分も背中をもたせかけた。 かなり高い位置から、彼女の意外に手際の良い指の動きと、必然的に視界に入る魅惑の谷間を 眺めて楽しむ。彼女の肩にわざと少し体重をかけてみるが、抗議の声は聞こえてこなかった。 うーん、とククールは小さく唸った。この状況に不足はないが、本来の目的はやはり諦めきれない。 触れ合っている身体を、軽く揺すってみる。 「なー、ひざ貸してって」 「まだ言ってるの?自分の腕でも枕にして寝てなさいよ」 「男のゴツい腕でなんか寝れねぇよ。ゼシカのあったかくて柔らかいひざがいーの」 「じゃあヤンガスのおなか借りたら?あったかくて柔らかいに関してあれを上回るものはきっとないわよ」 「よりによってヤンガスかよ!」 「それがイヤなら、そこらへんでしましまキャットでも捕まえてきなさい」 「…あぁ言えばこう言う…」 はぁ、とククールがため息をつくと、今度はゼシカがクスクスと笑った。 まぁ、この笑顔を見ながらうたた寝するだけでも充分か、とククールが考えた時。 「後ろ向いて」 ゼシカがそう言ったので、なんだよ、と言いつつも大人しく背を向けると、突然背中にふわりとした 感触が降ってきた。慣れた感覚。自分のマントだ。 「前留めて」 言われるままに留め具で固定すると、後ろからゼシカがマントを軽く引っ張って背中に触れる。 「…うん、大丈夫ね。少しはましになったわ」 顔が見えないからか、その声音が妙に優しく聞こえた。 サンキュー、と言いかけたところで、お礼の言葉がうわっ と小さな叫びに変わる。 後ろから思い切りマントを引っ張られ、あったかくて柔らかいものに後頭部がぽすりと包まれる。 気付くとククールはゼシカを見上げていた。 常にはない視点だ。おぉ、とククールは思わず声をもらす。 「少しだけよ」 ゼシカの照れた顔が新鮮に映る。そして至近距離で下から見上げる巨大な2つのふくらみも。 これはこれで最高だな、などと考えながら、ククールは改めて身体をラクにしてゼシカを見上げた。 「…マジに寝てもいい?」 「いいわよ。私はあなたのマヌケな寝顔でも見てるから」 「ひでー。やっぱ起きてよっかなーこの位置最高の眺めだし」 そこでゼシカはククールのニヤける視線に先に気付いたのか、 そのだらしなく垂れ下がった目元を手の平でパシリと覆ってしまった。 「おーい、ゼシカちゃんのかわいい顔が見れねぇんですけど」 「見てるのは別のところでしょ。目を閉じないとラリホーかけちゃうわよ」 起こったフリをしながらも言葉の端で笑っているゼシカに、 はいはい、とおざなりに返しながらククールも笑い、身体の力を抜いた。 「―――おやすみ ククール」 やっぱり顔が見えないからだろうか。とても優しく聞こえたそのささやきに、 ククールは小さく頷いて、たちまち穏やかな眠りに落ちたのだった。
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「一体何があったんでゲスかねえ…」 不思議な泉の前に、放心したような表情のヤンガスが、 空を見上げてポツリと呟く。 その隣で所在なさげに立っていたトロデ王が声も無く頷いた。 突然何の前触れもなくいなくなったククールとエイトに、 理由も行き先も知る術もない他の四人は、 ただ泉の前で待ち続けるしかなかった。 ミーティアは馬の姿のまま、落ち込んだ様子も露に、 本日何度目かの泉の水を口にちびちびと飲む。 「これミーティア。あまり飲みすぎるのはいかんぞ」 その背を宥めるように撫でながらトロデ王が窘めるものの、 ミーティアは憂いをたたえた表情で、 横に首を振って聞こうともしない。 ゼシカは草むらの上に膝を抱えて座り込み、 心ここにあらずな様子で、ブチブチと身近にある草を、 手許も見ずに引き抜き続けている。 はあ…と誰のものとも付かない溜め息が零れたとき、 不意に泉の入口から草を踏みしめるようにして歩く足音が聞こえ、 咄嗟にヤンガスとトロデ王が振り返り、ミーティアが顔をあげた。 「「ククール!!」」 二人の声が驚きにハモりを響かせてから、 ようやくゼシカがハッと我に返った様子で、 立ち上がるのと同時に振り返った。 ふしぎな泉の入口の方から、 ククールが「悪い悪い」と言いながらバツの悪そうな顔で、 片手を挙げて歩いて来る姿がゼシカの視界に映る。 「ククール!」 二人とは一呼吸以上遅れて叫び、 ゼシカは逸早くククールの許に駆け寄った。 ぶつかりそうになる一歩手前で二人同時に立ち止まり、 涙に潤んだ目でゼシカがククールを見上げる。 「この、バカ!!一体どこに行ってたのよ、 何かわかんないけどエイトも一緒にどっか行っちゃうし、 本当、何かあったのかと思って心配し」 耐え切れずに薄らと涙を浮かべ、大きな声で捲くし立てるゼシカを、 ククールが何も言わずに、遠慮がちに抱き締めた。 突然全身に伝わる温もりに、驚いたゼシカの声が止まる。 「ゼシカ、…ごめん」 申し訳なさそうな声音で、ククールはゼシカの耳元に囁いて、 名残惜しそうに抱き締めていた腕を解いた。 そして何が起こったのか把握出来ずに呆然とした ゼシカの肩に両手を置き、僅かに屈むような体勢で見つめる。 何かを言いかねて躊躇うように、ククールの双眸が左右に揺れる。 「……ごめん……好きだ」 真摯でどことなく申し訳無さそうな表情を浮かべ、 ゼシカを見上げるようにしてククールが短く告げる。 その言葉の意味を、ゼシカは瞬間理解出来ずに眉を顰めた。 「…何が?」 あまりにも間の抜けた返答にガク、とククールの肩が落ちる。 困ったように顔を顰めながらも、 ククールは気を取り直してゼシカの目を見つめ直した。 「ゼシカが…好きなんだよ。誰よりも、何よりも…………愛してる」 囁きかけるような掠れた声音で再度想いを打ち明けながら、 ククールはゼシカの口許を見つめ、目を閉じて顔を寄せた。 徐々に寄せられるククールの顔と、その言葉に、 ようやくゼシカの止まっていた思考回路が元に戻るのと同時に、 首筋から額にかけて一気に赤く染まり始める。 「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと、ちょっと待っ」 突然のことに困惑の色を露に、 ゼシカが上擦った声をあげ制止をかけるも、 ククールの動きが止まる様子は無い。 あまりの至近距離が耐え切れずに、ゼシカは目を強く閉じた。 チュッと軽い音が聞こえてゼシカの額に柔らかい感触が伝わる。 「……オレにこういうことされるの、嫌か?ゼシカはエイトが…」 好きか、とククールが問い掛ける間も無く、 唇にキスされるかと思っていたゼシカは、 身を強張らせていた力が一瞬にして抜け、 ずるずるとその場に崩れ落ちて行く。 「お、おいゼシカ!」 慌ててククールがそれを抱きとめるも一瞬遅く、 ゼシカは赤くなった顔を両手で押さえ、 その場に座り込んで俯いてしまう。 「…ゼシカ…?」 ククールがその前に膝を付いて、心配そうに覗き込む。 「…私も…あんたのこと、悔しいけど、 すごく悔しいけど、…ずっと…好き、だったわよ…」 少しの間を置き、俯いたままのゼシカが 今にも消え入りそうな小さな声で呟くように零す。 その言葉にククールは僅かに驚いた表情を見せたあと、 目を薄めて心底安堵したような柔らかい笑みを零し、 「……ありがとう」 と短く耳元に囁きかけて、ゼシカの身体を柔らかく抱き締めた。 「…でも、いきなりこんなことされたら心臓に悪いわよ、 このバカ――――――――――――――!!!」 そんなククールの不意を突くように ゼシカは突然真っ赤に染まった顔をあげると同時に、 勢い良く振り被ってククールの右頬を張り飛ばした。 バチーン!と大きな音があたりに響く。 「ちょ、まっ…何もそんな怒ること」 「怒るに決まってるでしょ!こんなに心配させて、 挙句の果てに私の了解無く変なことまでしようとして!」 叩かれた頬を押さえ、逃げ腰になるククールを、 ゼシカが自分の腰に手を当てて、物凄い剣幕で言い返す。 そんな二人の一連の様子を、少し離れた位置で見守っていた ヤンガスとトロデ王はお互いに顔を見合わせたあと、 「自業自得ですげすな」 「喧嘩をする程仲が良いと言う奴じゃろうな」 と交互に安心半分、呆れ半分で呟きを零し、 やれやれと言った様子で肩を竦めると、再び旅に戻る仕度を始めた。 更にその二人よりも後方に少し離れた位置で、 ルーラでこっそり戻って来た エイトとミーティアが寄り添うように立って、二人の様子を眺めていた。 馬の姿のままのミーティアの長い鬣を優しく撫でたあと、 柔らかく細められたその目を見つめて、エイトは幸せそうに微笑んだ。 un titled1 un titled2 un titled3
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